2004.03.20

動き出す富士山

 サイトの方に、「動き出す富士山」をアップしました。富士山の火山活動に関する話題です。ネイチャーの3月4日号に掲載されていた記事を元にしています。
 仮にアンケートをとってみたら、もしかして「富士山が火山である」ことを知らない人はかなり多いのでしょうか。あれほど巨大な火山から程近い場所に巨大な首都を構えている国というのは他に例を見ないらしく、外国人からは奇妙に思われているのかもしれません。

 そういえば数年前に、首都移転の話が盛り上がっていたことがありましたね。あれはもしや、富士山噴火の危険が指摘されたことがきっかけでしたっけか。首都機能が一度に麻痺してしまうから、とか……。最近は全く聞かなくなりましたが、咽喉もと過ぎれば熱さを忘れる、ってやつですかね。

 どうも、富士山というのは「過去に大噴火を起こしたという記録があるが、地質学的に見ると、あまり激しい噴火を起こすタイプの火山ではないはず」であるらしく、矛盾が生じているようです。
 あれだけ大きな図体に何百年もエネルギーを溜め込んでいるのだとすれば、何が起こってもおかしくないような気はしますけど。

 でも、もしも富士山が本当に大噴火を起こしたら、日本人は裏切られたような気分を味わうことになるのかもしれません。

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2004.02.26

環境に優しい兵器

 環境や健康に対する意識が高まるにつれ、製造側による改良の努力も進められてきました。たとえば洗剤の無リン化、あるいは発ガン性のある食品添加物の使用禁止などです。昔はみんなが平気で使っていたものが、悪の化身みたいな扱いをうけるようになったり、まあ悲喜こもごもな部分もありますが。

 もちろんそれが、全体的に見ていい流れであることは間違いありません。しかし、戦争に使われるような兵器にまでそんな概念が広がりつつある、というのはどう感じますか?

 サイトの方に、『ネイチャー』の記事を和訳編集した「兵器も環境に配慮する時代」をアップしました。とりあえずは、「こんなことを考えている人も世界にはいるんだねー」ってな感じで読んでいただいてもいいのではないかと思います。翻訳の過程で調べ物をしてみたら、爆薬関係のかなりヤバそうなサイトに入り込んでしまったりして、「やっぱり世の中には危ないヤツもいるなー」としみじみ感じましたが、まあ考えるだけで実行に移さなければいいか、参考になったし……なんて。

 とはいえ真面目な話、「環境に配慮した兵器」というのは世間にどう受け止められるものでしょうか。
 たとえば「人権に配慮した死刑執行」なんてのがありますが、死刑は断固廃止すべきだ! と考えている人から見れば偽善もいいところでしょう。ちょっとこれに似ているかな、という感じがするのですけれど。
 ベトナム戦争で使われた枯葉剤の残留がいまだに問題になっていたりします。そういった、後代にまで残る被害を無くすことは、少なくとも無意味なものではないはずです。はずなんですけど、ね。

 スポーツとして行われているクレー射撃も、公式競技の場合は鉛弾を使わねばならず、鉛による水質汚染が懸念されるといいます。おかげで、国体での競技開催が危ぶまれているとか。これも広い意味で、兵器による環境汚染と言えるでしょう。なんでも、シートを敷いて、鉛弾を全て拾って回収することになったという話ですけど。
 かつてF1で使用されるガソリンが有鉛から無鉛へ切り替えられていたころ、確かフェラーリだけがいつまでも有鉛ガソリンを使いつづけて周囲から非難されていましたっけ。

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2004.02.18

貝リンガル

 貝の挙動から海の異変をいち早く知る手法が開発されたそうです。
 その名も「貝リンガル」。ちなみにこの名前で検索をかけてみたところ、「有明海を豊かな海に戻すため、口をぱくぱくさせている貝たちの声を聞く装置の開発を」なんて話題を拾ってしまいましたが、関係はなさそうです。

 開発したのが養殖真珠で有名なミキモトだというのが、ちょっと頼もしいではありませんか。もちろん、使う貝は真珠貝です。

 こうした、水質の変化を生物を利用して感知するシステムは「バイオセンサー」とか呼ばれています。浄水場などでは、水に毒物が投げ込まれたりするような非常事態に備えて、金魚などを飼っています。例えば、水槽に入れたメダカの動きをコンピュータで追跡して水質の変化を知るシステムなんてのも開発が試みられているようですが、なかなかうまくはいかないらしいです。
 浄水場の金魚が人間の水質分析班よりも優れているのは、何といっても反応が早いこと。あと、「とにかく何か異常がある」ことが分かることです。ひと口に「毒物」といってもいろいろあって、分析の方法もそれぞれに違うのですが、毒物の種類よりも前にまず毒物の存在を知るのが先決というわけです。

 ホタテガイなどはジェット噴射でものすごい速度で泳ぐと聞きますが、一般に貝は移動能力が乏しいので、その場の水質変化の影響をもろに受けてしまう場合が多いようです。だから、有毒なプランクトンが大量発生すると、貝が大量死したりします。
 でも「貝リンガル」の記事によれば、真珠貝は少しでも水質変化の影響をしのぐために、一生懸命に貝を開け閉めしているのだそうです。それは別に人間にメッセージを送ろうとしてやっていることではないはずですが、長年にわたって真珠貝を扱ってきたミキモトがついに貝の気持ちを読むことに成功した、というのは、なんだかいい話ではありませんか。

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2004.02.07

ガイジンを識別せよ

 外国人が関与する犯罪の増加に伴い、容疑者がどの民族であるかを解析しやすくするための『民族識別指標』データベース構築を目指す日本警察の方針は、外国人からどのようにとらえられているのでしょうか。

 私のメインサイト「All in One!」には、「ネイチャーランド」という、イギリスの科学雑誌『Nature』の記事を少し簡略化して訳して紹介するコーナーがあります(ココログとして見に来られた方に一応説明)。
 メインジャンルは宇宙・バイオ・環境ですが、このたび新たに「Vineyard」というコーナーを設け、それら以外の話題を入れることにしました。それに伴い、これまで無理にバイオ・環境に入れていた記事を移動させました。

 Vineyardに、新しく「ガイジンを識別せよ」をアップしました。
 もっと詳しい情報を知りたい方は、科学警察研究所のHPにあります資料(PDFファイル)をあわせてご覧ください。

 わざわざ英語で書かれたものを読む醍醐味というのは、やはり日本人には発想もできないような考え方に出会えることですが、「外国人は日本をどう見ているか」「西洋的価値観から見て、日本はどのように変なのか」といったことを知ることができるのもその一端です。
 いつか日本警察がこの『民族識別指標データベース』が完成させて、そのことがテレビや新聞で一般にも報道されるとしたら、

 増えつづける外国人犯罪の捜査に強い味方が登場した。科学警察研究所が開発した、『民族識別指標データベース』だ。犯罪現場にわずかに残された体組織からでも、容疑者の国籍を知るための大きな手がかりが得られるようになった。

 なんて、すばらしいこととしてさらりと説明されてしまうことになるだろうと思うのですが、実際こんなデータベース作成、アメリカあたりじゃとうてい無理でしょうね、技術的な理由からではなくて。日本人はこういうところ、無神経すぎるのかもしれません。

 半年ほど前に訳したものですが、同じくVineyardに入れています「アジアの核家族」も同様に、外国から見た日本を扱っています。欧米人がいかに日本人を信用していないかがよく分かりますので、よろしければこちらもご覧ください。

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2004.01.30

宇宙標準? 地球ローカル?

 ネイチャーランドの宇宙ネタの更新が半年以上滞っているので、この間見つけた少し面白そうなのを訳してみようかと思ったのですが、よく読んでみたらいま一つまとまりが悪くてあまり面白くなかったのでボツ。なので日記のネタにしちゃいましょう。

 水は生命の源と言われます。これに異論を唱える人はいないだろうと思います。地球の生物で、およそ水なしで生命活動を営めるものはいないでしょう。クマムシという生物は、カラカラに乾燥させても水をかければ生き返るとかいう話ですが、乾燥していたら動けないわけですし。
 でもそれは、果たして宇宙の真理なのだろうか、というのが今回のお題です。NASAは地球外生命を探すために、まず水の存在を探すことから始める方針であることを公言しているらしいんですが、それでは水に頼らない地球外生命を見逃してしまうことになるかもしれないではありませんか。

 生物の体内で栄養分や老廃物などを輸送するのには、やはり液体が便利なはずです。だから、液体が存在しなければ生命も存在しないだろう、ととりあえず仮定したとしても、水以外に液体はいろいろあります。温度や圧力にもよりますが、アンモニア、二酸化炭素、炭化水素などが水の代わりに使えるかもしれません。

 とはいえ、水というのは物理化学的に見た場合に非常に「例外的」な物質であることがよく知られています。固体(氷)になると体積が増える、4℃で体積が最小になる、比熱や誘電率がやたら大きい、といった性質を全て兼ね備えた物質は他になく、少なくとも地球上の生物を考えた場合、水の代替品として使えるものは考えられない、という結論になってしまうようです。
 さて、水がいらない宇宙生命体は存在するのでしょうか? 宇宙生命体の存在を否定しきれない限りは、水がいらない宇宙生命体の存在も否定しきれないでしょう。もしもそんな生命体が見つかったら、我々地球人はおのれの井の中の蛙ぶりを恥じることになるかもしれません。

 ところでお隣の火星は、水があったの氷があったの実はドライアイスだったのと、さまざまな説が次々に出てきて、一体本当はどっちやねん、という感じです。……もう、いちいち一つ一つの説に関心を持つのはやめて、決定版の結果が出るのを待っておこうかな、という気分になってきました。

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2004.01.15

青酸カリ

 山崎製パンを「青酸入れる」と脅した疑いでうどん屋の店主が逮捕されたとか。実際に青酸カリを所持していたわけではなく、パンのせいでうどんを食べてもらえないことを恨んでいたわけでもなさそうで、単に金に困っての犯行だったようですが……相変わらず、青酸カリは毒物の代表なのだなあ、と思います。

 青酸カリというのは慣用名で、シアン化カリウムという呼び方のほうを私たちは普通に使っています。青酸ソーダはシアン化ナトリウム。
 大学時代の学生実験で、ごく微量のシアン化カリウムを使うものがあったんですよね。当時はまだ私もウブでしたから、なんかものすごくビビってました。

 分析業に従事している現在、まあ時代はクリーン化とか省力化とかそんな流れで、分析にもあまり後処理に困るような毒性物質は使わないようになってきています。シアンの廃液は、酸性にすると青酸ガスが発生するので危ないんですよね。

 一体何年前に買ったものだろう、というような、ラベルからして時代を感じさせるシアン化カリウムのびんが、毒物庫と呼ばれる鍵付きのボックスに保管されています。もしも何者かに盗み出され、悪用されたりしては大変なので、厳重管理されているわけです。
 他にも、一般には毒物であることが知られていなくても、毒性の強い物質はもちろん毒物庫に保管されます。

 しかし数年前、毒物庫に新たな仲間が加わりました。アジ化ナトリウムです。確か、湯沸しポットのお湯の中に入れられていて、飲んだ人たちが中毒症状を起こした、というような事件があったんですよね。そのおかげで毒物としてのアジ化ナトリウムの知名度が上がってしまったため、盗み出して悪用しようとする人がいるかもしれないから、というので毒物庫入りとなったわけです。実際、毒物としてはそう危険な部類に入るわけではないと聞いてはいますが、やはり問題はネームバリューなわけです。
 毒物カレー事件の時も、毒物管理体制のチェックが入りました。三酸化ヒ素はもともと毒物庫に入っていましたけど。

 化学系の勉強や仕事をしていた人が、化学の世界を離れるとき、「いつか何かの役に立つかもしれないから」と、こっそりシアン化カリウムを持ち出して保管しておく、というケースがかつてはかなりあったと耳にしたことがあります。で、やがて役に立つどころか処置に困るようになる、と……。決して真似してはいけません。

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2004.01.10

自然の摂理

 ネイチャーランドをリニューアルしてみました。すっかり「ペンギンランド」になってます。あまりに可愛らしくて、使ってみたかったんですよペンギンアイコン。
 で、バイオ研究室に「ベジタリアン・フィッシュ」をupしました。本来肉食性である魚を、植物性の飼料で養殖できないか、という話題です。

 サケというのは、日本人の感覚からすれば、産卵のために川をさかのぼって来るところをつかまえるものであって、養殖するものではないような気がするんですが、ヨーロッパでは養殖が多いらしいですね。ふーん……と思っていたら、何ともタイムリーなニュースを見つけてしまいました。養殖サケには有害物質が蓄積している、と……。こちらは『ネイチャー』ではなく『サイエンス』に論文が発表されたそうです。

 魚にはPCBだのダイオキシンだの水銀だの、有害物質が蓄積しやすいことは前々から知られていることですし、そういうものを含んだ魚を飼料としてたっぷり与えられた養殖魚は、そりゃあ有害物質を濃縮するでしょう。
 でも、もし「ベジタリアン・フィッシュ」で述べられているように、飼料を穀物に変えることができれば、そのリスクはかなり軽減されるはずです。

 しかっし。
 「肉食性の魚に植物性の飼料を与える」というのと正反対のことがかつて行われていましたよね。「草食性の家畜に動物性の飼料を与える」つまり、ウシに肉骨粉を与えていたことが。
 BSEが伝染する原因となっていることが分かって、たちまち「そもそも、草食性であるウシに動物の組織を食べさせていたこと自体が自然の摂理に反する行為だったのだ」などと批判されるようになってしまいましたが……。しかし、このような問題が発生しなければ、確かに残酷な行為であるような気はしますが、肉として使えない部分を肉として再生する、非常に無駄のないリサイクルシステムだったのではないかとも思えます。
 だから、サケにダイズを飼料として与えることは、今はよいことずくめであるように見えても、もしもこの先に予期せぬ害が発生したとしたら、「そもそも、肉食性であるサケに穀物を食べさせていたこと自体が自然の摂理に反する行為だったのだ」などと批判されてしまうかもしれません。

 人間の行為というのは、ことごとく自然の摂理に反しているような気がするんですけどね。
 だから、先端技術に反対を唱えるのにいちいち『自然の摂理』を持ち出すのはいかがなものか、と思うんですけど。

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